2015年度公開講座の開催

2015年8月20日

2015年度言語文化研究所公開講座を下記の通り開催いたしました。

テーマ:古代インドの言語と文化 ― 発展と伝播

印度古典文化は、ヒンドゥー教・佛教・ジャイナ教などの諸宗教の中で、サンスクリット語・プラークリット語・ドラヴィダ語などの諸言語を通して形成され、さまざまな展開を遂げ、さらに海外に伝播しました。この絢爛たる印度古典文化のいくつかの局面を選び出し、それぞれの専門家が、内外の研究成果をも踏まえながら平易に解説します。サンスクリット文芸の分野では、大叙事詩「ラーマーヤナ」を採りあげ、南印度のドラヴィダ文学については、最古のサンガム文学の特色と発展について考察します。印度語古典はジャワ島にも伝わり、古ジャワ語による一種華麗なる独特の文芸が開花しました。本邦ではまだあまり知られていない、この古ジャワ語文学についても講義します。印度や印度文化に関心を懐いている方々のご聴講をお待ちしております。


■ 第1回 10月3日(土)14時00分~16時00分 

講師:土田 龍太郎氏(東京大学名誉教授・慶應義塾大学言語文化研究所講師)
演題:大叙事詩「ラーマーヤナ」-シーターの謎

ヴァールミーキ仙人の作と言われる名高いサンスクリット語大叙事詩「ラーマーヤナ」は、聖王ラーマの生涯を謳う巨篇であり、主人公ラーマが猿軍を率いてランカー国に遠征し、羅刹王ラーヴァナを退治し、愛妃シーターを救い出すまでのいきさつがことに詳しく語られている。女主人公のシーターの出生と他界にはなにかしら謎めいたところがあり、ラーマとシーターの夫婦生活もいくつかの問題を孕んでいる。叙事詩テキストが発展してゆく過程で、主人公ラーマと妃シーターの性格も微妙な変容を蒙ったと思われるが、本講演では、女主人公シーターに焦点を当てながら、ヴァールミーキ叙事詩の諸問題を考察することにしたい。


■ 第2回 10月10日(土)14時00分~16時00分

講師:安藤 充氏(愛知学院大学文学部教授)
演題:古ジャワ文学―サンスクリット文学の受容と展開

古ジャワ語はジャワやバリで伝承されてきたオーストロネシア語族の言語だが、サンスクリット語からの借用語が非常に多く、サンスクリット文学からの翻訳、翻案作品がたくさん残されている。
 本講演では、世にあまり知られていない古ジャワの言語と文学を概観したうえで、古ジャワの作家がサンスクリット古典の正確な知識を作品に反映させる一方で、誤解も含め現地的な解釈、独特の変更や創作を施している点に焦点をあてる。「バガバッドギーター」などを取り上げ、サンスクリット版と古ジャワ版の双方を参照しながら、古ジャワ世界におけるサンスクリット文学の受容のあり方について考察してみたい。

■ 第3回 10月17日(土)14時00分~16時00分
講師:高橋 孝信氏(東京大学文学部)
演題:サンガム文学―南インド古代の世界

サンスクリット語ととともにインドの二大古典語とされるタミル語には、サンガム文学と呼ばれる古代文学(紀元後1~2世紀ごろ)がある。サンスクリット文学とは異なり、サンガム文学は非常に写実的であるから、インドの古代社会の様子を知りたいわれわれにはありがたい。他方、年代・地域・文化の隔たりによって分からないことも少なくない。そこで、本講演では、タミル古代文学の紹介のかたわら、語学だけでは直ちに理解できない事例をいくつか取り上げて、文学研究に必要なものがなんであるのかを考察する。


*会 場:慶應義塾大学三田キャンパス 北館ホール http://www.keio.ac.jp/access.html
*受講料:無料
*申 込:不要(直接会場にお越しください)