2017年度公開講座の開催

2017年10月24日

2017年度言語文化研究所公開講座を下記の通り開催いたしました。

テーマ:アジアの諸文化とジェンダー
人間の諸文化には性差に関わる独自の思考や慣行が見られます。それらの文化的な性差は人間をどのように規定してきたのか。人はそれにどのように対応してきたのか。アジアの諸事例から考えてみたいと思います。


■ 第1回 10月7日(土) 14時00分~16時00分 
講師:後藤 絵美氏(東京大学 日本・アジアに関する教育研究ネットワーク特任准教授/東洋文化研究所准教授)
演題:イスラームの啓典とジェンダー:男女のあり方と役割を中心に

ムスリムにとってクルアーンの言葉は一字一句に至るまで神に由来するもので、そこには神が定めた事柄が示されていると考えられている。ただし、ある章句をどう解釈し、そこにどのような「神の定め」を読み取るのかは、個人や集団によって異なることがある。 クルアーンの啓示解釈の中でも、とくに大きな揺れ幅がみられるのがジェンダーに関わる部分である。本講演では、「男女のあり方と役割」を示した章句を取り上げ、それがこれまで、どのように読まれてきたのかを見ていく。


■ 第2回 10月14日(土) 14時00分~16時00分
講師:坂元 ひろ子氏(一橋大学名誉教授)
演題:中国の身体文化とジェンダー:近代を中心に

中国文化にあって、男性の科挙と同様、階層・民族・ジェンダーと関わって長く続いた、女性の纏足という足の変形加工の風習は無視できない。加工は中国文化の基本とはいえ、一方で古くより父母から受けた身体髪膚を損なわないのが「孝」の基本とされ、儒者の纏足批判もあった。清代には漢族の風習としての禁令もとりさげられ、近代に批判が高まるまでは大流行した。時代の変化に応じながらも、身体性ゆえに時間を要した解消過程の困難さについて考えてみる。


■ 第3回 10月21日(土) 14時00分~16時00分
講師:伊藤 友美氏(神戸大学大学院国際文化学研究科准教授)
演題:現代上座仏教世界の比丘尼:ジェンダーとヒエラルキー

近年に至るまで、スリランカ・タイをはじめとする上座仏教圏において、黄衣をまとった仏教の僧侶は、比丘と呼ばれる男性の僧侶に限られており、比丘尼と呼ばれる女性の僧侶としての出家は、現代には不可能であると考えられてきた。男性の比丘のみから構成される現代の上座仏教圏のサンガ(僧団)は、いずれの国においても、公式には女性の比丘尼出家を実施・容認していないものの、2000年代以降、スリランカとタイでは、比丘尼として生きる女性が増加・定着しつつある。本講義では、様々な社会的立場にある人々の比丘尼に対する見解から、現代上座部仏教におけるジェンダーとヒエラルキーの問題について検討する。


*会 場:慶應義塾大学三田キャンパス 北館ホール
       https://www.keio.ac.jp/ja/maps/mita.html → キャンパスマップ【1】北館の1階です
*受講料:無料