2023年度公開講座の開催

2023年8月 7日

2023年度言語文化研究所公開講座を下記の通り開催いたしました。

テーマ:東南アジアの文字
東南アジアには、オーストロネシア、モン・クメール、チベット・ビルマ、タイ・カダイ、ミャオ・ヤオといった様々な系統に属する多数の言語が話されています。ひるがえって文字を見てみると、インド系の文字、漢字系の文字、アラビア系の文字、ラテン文字を用いた表記法など、言語系統とは無関係にこれまた様々な文字が使われています。本講座では、このうちインド系、漢字系、アラビア系の文字について、それらが使われている地域の言語や文化を専門に研究してきた研究者がそれぞれの切り口で語ります。

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■ 第1回 9月30日(土) 14時00分~16時00分 
 講師:加藤 昌彦(慶應義塾大学言語文化研究所)
 演題:インド系文字

東南アジアでは多くの地域で古代インドのブラーフミー文字に起源を持つインド系諸文字が使われている。公用語になっている言語だけを見ても、カンボジア語、ラオス語、タイ語、ビルマ語といった言語が現在インド系文字を用いて書かれる。また、インドネシア語やマレー語の先祖にあたる言語やフィリピンのタガログ語が古い時代にインド系文字で書かれていたことも知られている。公用語だけでなく少数民族諸言語や地方語にもインド系文字で書かれる言語が少なくない。本講義では、東南アジアで使われるインド系文字を概観した後、その仕組みについてビルマ文字やタイ文字を例に取って解説し、講師の専門であるミャンマーの少数民族に見られる文字復興運動にも言及する。

lecture1.JPGヤンゴン大学にほど近い街角に掲げられたビルマ文字の看板群。英会話教室やコンピューター教室の宣伝が多い。ビルマ文字はインド系文字の一種である。


■ 第2回 10月7日(土) 14時00分~16時00分
 講師:清水 政明(大阪大学大学院人文学研究科)
 演題:漢字系文字

東南アジアの中でも中国に接する地域の一部では古くから母語を記す手段として漢字が
用いられてきた。それは、かつて日本語の全ての音が漢字で記された(万葉仮名)こと
や、日本独自の漢字が創られた(国字)こととよく似ている。この講義では、かつてベ
トナムで用いられたチュノム(字喃)と、ベトナム北部の少数民族タイー族の宗教職能
者が現在も用いているノム・タイーを例に、その造字法について紹介すると共に、現在
どのような形でその文字が保存されているかを紹介する。

lecture2.JPGベトナムで1910年に出版された『國風詩集合採』という官製の詩集。漢文、字喃、クオックグーが混在する資料として知られる。


■ 第3回 10月14日(土) 14時00分~16時00分
 講師:坪井 祐司(名桜大学国際学部)
 演題:アラビア系文字

現在はローマ字で書かれるマレー・インドネシア語であるが、歴史を通じて表記文字は変化してきた。島嶼部東南アジアのイスラム化とともに、アラビア文字をもとにしたマレー語表記(ジャウィ)が広まり、多くの王統記や宗教書が書かれた。イギリス、オランダの植民地統治によりローマ字表記が制定されたが、第二次世界大戦前後まではジャウィも併存しており、マレー語による新聞・雑誌の文字として、マレー人による政治的主張を発信した。多様な出自を持つムスリムを結びつける媒体となってきたジャウィは、多民族・多文字社会である今日のマレーシアにおいても、マレー人の文化やアイデンティティの象徴としての意味を持っている。

lecture3.jpgブルネイの言語出版局に掲げられていたマレー語の看板。ジャウィ文字で1行目に「マレー語」、2行目に「国家の公用語」とある。その下にローマ字で同じことが記されている。



*受講料:無料
*事前申込制:※受付終了
・お申し込み後に当方より登録完了のメールが届きましたら、受付完了となります。
 メールが届かない場合は、事務局までお問い合わせください。
・お申し込みいただいた方には、開催前日までに事務局より別途オンライン開催情報を
 個別メールにて配信いたします。
 ※第三回参加申込者へ10/13(金)10:30頃にウェビナー招待URLをお送りしております。
  メールが届いていない方がいらっしゃいましたら、事務局までご連絡ください。

*申込締切:各講座開催日3日前まで
*チラシのダウンロードはこちら

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