言語学コロキアム「言語研究と日本手話」が開催されました

2013年12月13日

11月30日、西校舎527教室において慶應言語学コロキアム「言語研究と日本手話」が開催された。この講演会の目的は前回(5月11日「日本手話の現在(いま)」に引き続き「言語研究に関心を寄せるろう者」と「手話言語に関心を持つ聴者」が情報を共有することである。今回も聴とろうの講師による2本の講演が行われた。

 

文書5.jpgまず当研究所教授の北原久嗣が「言語とは何か」という演題で、ヒトという種には生まれながらにI言語(併合・辞書)が備わっていること、そしてI言語が成熟する環境が与えられれば、個別言語が獲得されるという生成文法の言語観について身近な例を交えて説明した。言語行為という日常生活の一見「あたりまえ」の現象に「なぜ」という問いを発見すること(平凡な世界の中に不思議を感ずること)そして複雑な自然現象の分析における抽象化のプロセスの重要性が強調された。

 

文書6.jpg

国立障害者リハビリテーションセンター手話通訳学科教官の木村晴美氏の「視る言語、日本手話!」という講演では、日本手話の動画データとともに、音声言語にはみられない文法的特徴が示された。形容詞に近い手話表現が文法化により接続詞的な機能を担うように変化した例や、指さし・目線・目の開閉などのNMM(non-manual markers, 非手指標識)で時間の経過や話者が認識している情報、動作主が交替する例など、手話言語の分析の「難しさと面白さ」が伝わる内容であった。

 

ろう者・言語研究者・学生や院生・職場や生活の場で手話が身近な存在である聴者など、130名を超える参加があった。今後もろう者と聴者が言語研究への関心を分かち合えるような企画を検討する予定である。(文責・松岡和美) 文書7.jpg