言語学コロキアム Phrase Structure Properties and Transfer/Spell-Out が開催されました

2014年1月22日

118日、三重大学特任准教授の瀧田健介先生をお迎えし、導入部および2部構成のセミナー形式で、言語学コロキアム Phrase Structure Properties and Transfer/Spell-Out が開催された。

 

導入部では、これまで句構造に規定されてきた特性 (階層性、線的順序、範疇情報など) が整理され、これら句構造の諸特性が、Chomsky (2013) の枠組みのもと、どのように扱われているか、また構造構築の基本操作である併合 (Merge) および統語部門とその他の部門を繋ぐ操作である転送 (Transfer/Spell-Out) がどのように機能しているか、これらの点が明らかにされた。

 

1 Labeling through Spell-Out では、Chomsky (2013) が指摘した {XP, YP} のラベル未決定の問題について、転送を適用した結果、XP, YPのいずれか一方を主要部と同等に扱うことができるようになるため、ラベル未決定の問題は生じないとする分析が提出された。また、その帰結として、小節構造に転送を引き起こす主要部が存在していること、there 構文の主語が元位置に留まれることが示された。

 

2 Twin-Peaks at the Phase Edge では、Epstein, Kitahara, and Seely (EKS) (2012) の構造構築分析が取り上げられた。EKSの分析では、複数の根 (root) を持つ構造が循環的に生成され、この構造を解消するために転送が適用されていたが、新たな問題として、複数の要素が単一の範疇へ同時に併合した場合、ここでも複数の根が生成されるが、この複数の根を持つ構造は転送によって解消できないことが示された。さらに、そのような構造を持つ派生を収束させるためには、EKSが主張する転送の即時適用では対応できないことが論じられた。また、同時に併合の適用を受ける複数の要素間の線的順序や階層性については、併合以外の手段を必要とする可能性が指摘された。

 

併合と転送という操作を活用する試みは示唆に富むものであり、ラベル付けの問題、複数の根を持つ構造の問題という、現在集中的に取り組まれている構造構築の問題について理解を深めることができた。

 

 

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