言語文化研究所総会記念講演会「ソロヴィヨフの「区別と一致、中道」の精神について」開催

2018年2月 1日

下記のとおり、言語文化研究所総会記念講演会を開催いたしました。


<日時>2018年3月3日(土)16:15~18:00

<会場>慶應義塾大学三田キャンパス 北館ホール

<講師>谷 寿美君(文学部教授)

<演題>「ソロヴィヨフの「区別と一致、中道」の精神について」
 ウラジーミル・ソロヴィヨフ(1853-1900)は帝政末期ロシアにおいて東西教会の一致を語り、キリスト教護教に生涯を捧げた哲学者ですが、その思想の根底にはなぜか東洋的精神に近いものが見出されます。キリストの神人性の普遍的実現を指さすその思想に、なぜ東洋の、大乗仏教の視点にも通ずるような精神が見出されるのか、一つの不思議ではあります。その謎を解こうとする際の鍵概念となるのが、「区別と一致、中道を行く」という青年期の言明です。対極概念で指さされるものを、区別しつつも分離させて考えることのない精神がこの哲学者を特徴づけているのですが、その見方の源を辿ると、キリストにおいて神性と人性が混同されず、分離されず、一致していると定められたカルケドン信経(451)の精神が潜み息づいているように思われます。神と人をつなぐ仲保者キリストを仰ぐ信仰世界の英知は、この哲学者において、より特化された形で、全一概念「ソフィア」として語り出されました。
 相反するものの逆説的一致を伝えるその理念は、東洋的な両極概念の不即不離、特に非一非異性を教える大乗仏教の智恵と共振する何事かを思わせます。今回はそのような共振性を、井筒俊彦先生の諸作品に見られる幾つかの見解と共に説明しつつ、宗教の質的差異を超えた地平での「智恵」について何らか考える機会にしていただければと願っています。


*参加費:無料
*申込:不要 (直接会場にお越しください)