2014 Theoretical Linguistics at Keio (TaLK) 『Linguistics as Scientific Inquiry Lecture Series #1』開催しました(9月1日~5日)
2014年11月20日
下記のとおりイベントを開催いたしました。
2014 Theoretical Linguistics at Keio (TaLK)
『Linguistics as Scientific Inquiry Lecture Series #1』
日 時:9月1日(月)〜5日(金)14時〜18時
会 場:慶應義塾大学三田キャンパス北館ホール(定員200名・先着順)
テーマ:日本語研究を軸とする比較統語論の成果と課題
講 師:斎藤 衛氏(南山大学人文学部人類文化学科教授)
主 催:慶應義塾大学言語文化研究所 協 力:慶應義塾大学次世代研究プロジェクトB
これまでの60年間に生成文法は目覚ましい発展を遂げましたが、Kuroda (1965) を初めとして、その間、日本語研究からどのような貢献が出来るのかが繰り返し問われてきました。本セミナーでは、いくつかの具体例をとりあげ、日本語の 特殊性に基づいて、一般理論に対してどのような提案ができるかを共に考えます。また、後半には、日本語文法を規定するパラメターの性質についても議論する予定です。
※以下の画面をクリックすると動画が視聴できます
◆9月1日:『裸句構造理論と選択制限』
併合の自由な適用により句構造が形成されるとする裸句構造理論の下では、意味的選択や意味の整合性が、文法的な句構造の識別において重要な役割を果たします。第1回セミナーでは、日本語におけるモーダル、補文標識、談話的小辞の階層性をとりあげ、選択制限と意味的整合性による説明を試みます。
【配布資料】2014.9.1『裸句構造理論と選択制限』.pdf
◆9月2日:『削除現象―項削除を中心として』
日本語における削除現象を概観し、特に日本語に特徴的な項削除現象について、その分布と性質を詳しく見ていきます。項削除とは何であるのか、いわゆる空代名詞をどのように異なるのか、また、それは日本語のような素性一致を欠く言語においてなぜ許容されるのかを考えます。
【配布資料】2014.9.2『削除現象-項削除を中心として』.pdf
◆9月3日:『スクランブリングと再構築化』
日本語の最も広く知られている特徴は、スクランブリングの自由な適用であると言えましょう。スクランブリングに分析を与えた上で、その特徴を利用して、フェイズの循環的解釈を仮定しつつ、束縛理論や連鎖の解釈についてどのような帰結が得られるかを議論します。
【配布資料】2014.9.3『スクランブリングと再構築化』.pdf
◆9月4日:『句構造解釈における文法格の役割』
日本語が素性一致を欠くとする仮説の下で、文法格の統語的役割について考えます。Chomsky (2013)の理論では、素性一致の主要な役割は、XP-YPの併合を可能にすることにあります。日本語では、文法格がその役割を担うとする作業仮説を立て、多重格、自由語順、語彙的複合動詞など、日本語の主要な文法的性質に説明を与えることを試みます。
【配布資料】2014.9.4『句構造解釈における文法格の役割』.pdf
◆9月5日:『Wh演算子の比較統語論』
Kuroda (1965) 以来、日本語wh句の解釈は、主要な研究テーマとして議論されてきました。最もよく知られた仮説としては、Kuroda-Nishigauchi (1986) の変項説とWatanabe (1992) 等の演算子説があります。日中語のwh句を比較対照しながら、両者の利点を組むものとして、日本語wh句は、その意味を与値される必要がある非与値演算子であるとの仮説を提示します。