公開講座

2023年度公開講座の開催

2023年度言語文化研究所公開講座を下記の通り開催いたしました。

テーマ:東南アジアの文字
東南アジアには、オーストロネシア、モン・クメール、チベット・ビルマ、タイ・カダイ、ミャオ・ヤオといった様々な系統に属する多数の言語が話されています。ひるがえって文字を見てみると、インド系の文字、漢字系の文字、アラビア系の文字、ラテン文字を用いた表記法など、言語系統とは無関係にこれまた様々な文字が使われています。本講座では、このうちインド系、漢字系、アラビア系の文字について、それらが使われている地域の言語や文化を専門に研究してきた研究者がそれぞれの切り口で語ります。

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■ 第1回 9月30日(土) 14時00分~16時00分 
 講師:加藤 昌彦(慶應義塾大学言語文化研究所)
 演題:インド系文字

東南アジアでは多くの地域で古代インドのブラーフミー文字に起源を持つインド系諸文字が使われている。公用語になっている言語だけを見ても、カンボジア語、ラオス語、タイ語、ビルマ語といった言語が現在インド系文字を用いて書かれる。また、インドネシア語やマレー語の先祖にあたる言語やフィリピンのタガログ語が古い時代にインド系文字で書かれていたことも知られている。公用語だけでなく少数民族諸言語や地方語にもインド系文字で書かれる言語が少なくない。本講義では、東南アジアで使われるインド系文字を概観した後、その仕組みについてビルマ文字やタイ文字を例に取って解説し、講師の専門であるミャンマーの少数民族に見られる文字復興運動にも言及する。

lecture1.JPGヤンゴン大学にほど近い街角に掲げられたビルマ文字の看板群。英会話教室やコンピューター教室の宣伝が多い。ビルマ文字はインド系文字の一種である。


■ 第2回 10月7日(土) 14時00分~16時00分
 講師:清水 政明(大阪大学大学院人文学研究科)
 演題:漢字系文字

東南アジアの中でも中国に接する地域の一部では古くから母語を記す手段として漢字が
用いられてきた。それは、かつて日本語の全ての音が漢字で記された(万葉仮名)こと
や、日本独自の漢字が創られた(国字)こととよく似ている。この講義では、かつてベ
トナムで用いられたチュノム(字喃)と、ベトナム北部の少数民族タイー族の宗教職能
者が現在も用いているノム・タイーを例に、その造字法について紹介すると共に、現在
どのような形でその文字が保存されているかを紹介する。

lecture2.JPGベトナムで1910年に出版された『國風詩集合採』という官製の詩集。漢文、字喃、クオックグーが混在する資料として知られる。


■ 第3回 10月14日(土) 14時00分~16時00分
 講師:坪井 祐司(名桜大学国際学部)
 演題:アラビア系文字

現在はローマ字で書かれるマレー・インドネシア語であるが、歴史を通じて表記文字は変化してきた。島嶼部東南アジアのイスラム化とともに、アラビア文字をもとにしたマレー語表記(ジャウィ)が広まり、多くの王統記や宗教書が書かれた。イギリス、オランダの植民地統治によりローマ字表記が制定されたが、第二次世界大戦前後まではジャウィも併存しており、マレー語による新聞・雑誌の文字として、マレー人による政治的主張を発信した。多様な出自を持つムスリムを結びつける媒体となってきたジャウィは、多民族・多文字社会である今日のマレーシアにおいても、マレー人の文化やアイデンティティの象徴としての意味を持っている。

lecture3.jpgブルネイの言語出版局に掲げられていたマレー語の看板。ジャウィ文字で1行目に「マレー語」、2行目に「国家の公用語」とある。その下にローマ字で同じことが記されている。



*受講料:無料
*事前申込制:※受付終了
・お申し込み後に当方より登録完了のメールが届きましたら、受付完了となります。
 メールが届かない場合は、事務局までお問い合わせください。
・お申し込みいただいた方には、開催前日までに事務局より別途オンライン開催情報を
 個別メールにて配信いたします。
 ※第三回参加申込者へ10/13(金)10:30頃にウェビナー招待URLをお送りしております。
  メールが届いていない方がいらっしゃいましたら、事務局までご連絡ください。

*申込締切:各講座開催日3日前まで
*チラシのダウンロードはこちら

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1.ご提供いただいた個人情報は、学校法人慶應義塾の「個人情報保護基本方針」および 
  「個人情報保護規程」に基づき、外部流出等がないよう安全且つ厳密に管理いたします。
2.個人情報は、言語文化研究所から今回のイベント開催案内にのみに使用します。
  当該目的以外には使用いたしません。
3.個人情報は、第三者に開示・提供・預託することはありません。
4.個人情報の訂正・削除については、言語文化研究所までご相談ください。
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2023/08/07(月)

2022年度公開講座の開催

2022年度言語文化研究所公開講座を下記の通り開催いたしました。


テーマ:うたごえを科学する
「歌う」という行為は我々人間にとってあまりに身近なことであり、人間を人間たらしめている要素のひとつであると思われます。親は生まれたばかりの赤ちゃんに歌を通して人生を教え、小さな子どもたちは歌うことを心から楽しみます。大人になっても、誰しも音楽に勇気や活力をもらったという経験があるのではないでしょうか。しかし、現代、日本の大学という現場において、「歌う」という行為の意味に対して科学的な探究が十分になされているかといえば、否と言わざるを得ないでしょう。本講座では、三名のプロの歌い手たちを講師に迎え、各講師に「歌とは何か」について語って頂きます。また、大学の研究者側からも文学・言語学・音声学などの観点からの考察を提示し、講座全体を通して「音楽と科学の対話」の可能性を探っていきたいと思います。

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どの回も、対面・オンライン両方のハイブリッド形式で行い、150名〜350名の参加がありました。登壇者の講演をもとに、粂川・川原両氏がコメンテーターとして議論を深め、参加者の方々からも多くの質問・コメントが寄せられました。どの回も活発な議論が繰り広げられ、音楽の分析を通して「人間とは何か」という根源的な問いが浮かびあがる、という結論を再確認することとなりました。

***

   

1回 108日(土) 1030分~1230分 

登壇者:ZeebraHiphop activist

演 題:ラップから見る韻と歌詞の構造 

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2回 1015日(土) 1030分~1230分 

登壇者:北山 陽一(ゴスペラーズ・歌手)

演 題:音楽を科学するということ

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3回 115日(土) 1030分~1230分 

登壇者:城 南海(歌手)

演 題:唄とことばと声

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コメンテーター:
粂川 麻里生(慶應義塾大学文学部教授)
川原 繁人 (慶應義塾大学言語文化研究所教授)

*会場:ハイブリッド開催@Zoom Meeting/慶應義塾大学三田キャンパス 北館ホール
*地図:https://www.keio.ac.jp/ja/maps/mita.html ※キャンパスマップ【10】北館1

*受講料:無料
*事前申込制:こちらのフォームからお申し込みください ※先着順 ※受付終了

・お申し込み後に当方より受付完了のメールが届きます。
 メールが届かない場合は、慶應義塾大学言語文化研究所までお問い合わせください。

・会場参加の方は、当日、直接会場にお越しください。

・オンライン参加の方には、開催前日までに事務局より別途オンライン開催情報
 (Zoom meeting招待URL)を個別メールにて配信いたします。

 ※第3回参加申込者へは11/4(金)に招待URLをお送りしております。
  メールが届いていない方がいらっしゃいましたら、事務局までご連絡ください。

*申込締切:各講座開催日3日前まで
*チラシのダウンロードはこちら

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  当該目的以外には使用いたしません。
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4.個人情報の訂正・削除については、言語文化研究所までご相談ください。
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2022/09/03(土)

2021年度公開講座の開催

2021年度言語文化研究所公開講座を下記の通り開催いたしました。

テーマ:ミャンマーの民族
ミャンマーには言語系統の異なる様々な民族が暮らしています。ミャンマー政府によるとその数は135とされます。今年2月のクーデター以降、ミャンマー情勢は混乱を極めています。この混乱にはこの国の民族問題が無縁ではなく、そのためミャンマー情勢を理解するには民族問題の理解が必要となります。本講座では、ミャンマーの民族を取り巻く問題について、言語・宗教・歴史の観点から読み解きます。

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■ 第1回 10月2日(土) 14時00分~16時00分 
 講師:加藤 昌彦 (慶應義塾大学教授)
 演題:民族と言語

ミャンマーには100を優に超える多数の民族が住んでおり、それら民族の話す言語も多種多様です。少数民族の言語は多くの場合ビルマ語とは異なる別の言語であり、ビルマ人が聴いても理解できません。系統も様々です。本講演では、前半で主要8民族(カチン、カヤー、カレン、チン、ビルマ、モン、ラカイン、シャン)の言語の系統と特徴について解説し、後半ではカチン諸民族、ビルマ語諸方言を話す諸民族、カレン系言語を話す諸民族を例に取って民族と言語の関係に一対多、多対一、多対多といった複雑な対応関係が見られることを観察し、民族意識と言語の種類が必ずしも連動しないことを指摘します。


■ 第2回 10月9日(土) 14時00分~16時00分
 講師:藤村 瞳(日本学術振興会特別研究員)
 演題:民族と宗教

多民族国家であるミャンマーは、同時に多宗教社会でもある。上座仏教徒が国民の大半を占める同国で、宗教的少数派はどのように暮らし、政治や社会の変化にいかに対峙してきたのか。本講演では、一例としてキリスト教を取り上げ、その歴史背景も含めて紹介する。具体的には、時代ごとにビルマ王朝、イギリス植民地政府、国民国家ミャンマー政府と統治者が移り変わるなかでのキリスト教コミュニティの動態を解説する。これをつうじ、「ミャンマーのキリスト教徒=少数民族」という画一的な理解では捉えきれないミャンマーの多様性についても考えてみたい。


■ 第3回 10月16日(土) 14時00分~16時00分
 講師:池田 一人(大阪大学准教授)
 演題:民族と歴史

ミャンマーの民族を歴史のなかで考えると、分からないことがたくさん出てきます。王朝伝統をもたなかったカレンは前近代、どのような民族であったでしょうか。植民地期の史料にロヒンギャの名はまず見出せませんが、彼らはどこにいたのでしょうか。パガン朝はビルマ族最初の王朝ですが、その前半にビルマ語の痕跡がほとんど残っていないのはどうしてでしょうか。言語や属性を基準とした民族理解だけでは、これらの質問に答えられないようです。しかし、民族という意識は歴史の中でつくられるものだと考えると、どうでしょうか。本講義では歴史における民族ということ、そして民族の歴史ということを考えてみたいと思います。


*受講料:無料
*事前申込制:こちらのフォームからお申し込みください  ※受付終了
・お申し込み後に当方より登録完了のメールが届きましたら、受付完了となります。
 メールが届かない場合は、慶應義塾大学言語文化研究所までお問い合わせください。
・お申し込みいただいた方には、開催前日までに事務局より別途オンライン開催情報を
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 ※第三回参加申込者へ10/15(金)10:40にウェビナー招待URLをお送りしております。
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*申込締切:各講座開催日3日前まで
*チラシのダウンロードはこちら

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2021/08/31(火)

2019年度公開講座の開催

2019年度言語文化研究所公開講座を下記の通り開催いたしました。

テーマ:ビザンツの文化的伝統の形成
ビザンツ帝国の人々は強烈な「ローマ人」としての意識を持ちながらも、次第に古代文化から離れ、西欧と中東に対し独自性を主張する文明と文化を築き上げました。そして、それはバルカンからロシアに至る地域に継承されていきます。本講座は、世界史に大きな存在を占めつつも知られざるビザンツ文化の形成と展開を、人々が生きた社会・政治・キリスト教の三側面から鮮やかに描きます。

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■ 第1回 10月5日(土) 14時00分~16時00分 
 講師:田中 創 氏(東京大学准教授)
 演題:カルケドン公会議議事録から見る初期ビザンツ社会

本報告では、カルケドン公会議議事録に伝わる、主教位をめぐる生々しい争いを材料にして、ヘレニズム世界の社会秩序が、キリスト教が浸透していく中でどのように受け継がれ、組み替えられていったのか、その一端を見ていきたい。


■ 第2回 10月19日(土) 14時00分~16時00分
 講師:大月 康弘 氏(一橋大学教授)
 演題:コンスタンティノス7世ポルフィロゲニトス(在位905~959年)
    『帝国の統治について』とは

コンスタンティノス7世ポルフィロゲニトス(在位905~959年)による『帝国の統治について』De administrando imperio に取材して、10世紀ビザンツ皇帝の世界認識と「帝国」統治の理念について紹介します。本書は、息子ロマノス2世への帝国経営指南書でした。そこには、帝国周辺に広がる諸地域、諸民族に関する注目すべき記述が見られます。内容を概観し、ビザンツ皇帝の「世界観」を考察します。


■ 第3回 10月26日(土) 14時00分~16時00分
 講師:大森 正樹 氏(南山大学名誉教授)
 演題:ビザンツ的綜合の精神
    ―グレゴリオス・パラマスに見る伝統の「継承」と「改新」―

ビザンツの精神世界(キリスト教神学、哲学等)については、西欧のそれに比べ認知度は高くない。この講演では西欧とは一味違うビザンツの精神世界の特質を西欧との比較を通して明らかにし、具体的には、グレゴリオス・パラマスの神学教説が生み出される現場を探訪したい。


*会 場: 慶應義塾大学三田キャンパス 北館ホール
       https://www.keio.ac.jp/ja/maps/mita.html → キャンパスマップ【10】北館の1階です

*受講料: 無料

*申 込: 不要(直接会場にお越しください)

*チラシのダウンロードはこちら

2019/08/08(木)

2018年度公開講座の開催

2018年度言語文化研究所公開講座を下記の通り開催いたしました。

テーマ:碑文からみるローマの歴史
墓碑銘、戦勝記念碑、器に書かれた文字、はたまた壁の落書きなど、実に様々な形で残されている「碑文」は、古代ローマ世界の息吹をダイレクトに私たちに伝えてくれるものであり、また、もう一方の重要な資料である古典文学作品にはあまり現れてこない様相に、光を当ててくれるものでもあります。本公開講座では、碑文を主な資料として活発な研究をしておられる三人の研究者の方々に、碑文研究の面白さをたっぷり語っていただきます。

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■ 第1回 10月6日(土) 14時00分~16時00分 
 講師:大清水 裕 氏(滋賀大学准教授)
 演題:北アフリカ出土碑文に見るローマ皇帝ハドリアヌスと軍隊

ローマ皇帝ハドリアヌスは、帝国各地を旅したことで知られている。その旅の一環として彼は北アフリカの内陸部も訪れ、同地に駐屯する兵士たちを前に演説を行った。その演説は、皇帝の訪問を記念して製作されたモニュメントに刻まれ、現在まで残されている。本講演では、その碑文から知られる皇帝演説の分析を通して、古代ローマによる地中海世界の支配の実態を明らかにすべく試みたい。


■ 第2回 10月13日(土) 14時00分~16時00分
 講師:志内 一興 氏(武蔵野音楽大学講師)
 演題:ローマ人の墓石は語る-2000年前からのメッセージ

石に刻まれた文字が、「碑文」として数多く、ローマ時代から現代に伝わっています。数十万点にも達する碑文の大半は、実は墓石に書かれた「墓碑銘」です。
現代の都市では「墓地」にまとまって立つお墓ですが、ローマ時代のお墓には、まったく別の定位置がありました。町と町とをつなぐ街道沿いです。街道に沿ってずらりとならぶお墓に、ローマ人は思い思いの墓碑銘を書き込んだのです。
こうした立地条件から、墓碑銘にはときに、街道を歩く通行人への呼びかけがあらわれます。では2000年前の人々は、どんな言葉で、どんな思いで、街道を行く旅人に呼びかけたのでしょう。墓碑銘としてのこる先人からのメッセージを紹介したいと思います。


■ 第3回 10月20日(土) 14時00分~16時00分
 講師:中川 亜希 氏(上智大学准教授)
 演題:イタリアの聖域と社会

古代ローマには、共通する要素が見られる場合もあるものの、民族ごと、共同体ごとに多様な神々が存在しました。ローマが支配をひろげていく際、被征服者たちの神々は、ローマの国家祭儀に導入されることも、消滅することも、あるいは私的に信仰が維持されることもありました。ローマの支配下に置かれた際、各々の共同体の神々とその聖域がどのように扱われたのかを見ることは、ローマの支配とその互いの社会への影響を考える上で有効な手段となります。本講義では、碑文を主な史料とし、具体例から考察します。


*会 場: 慶應義塾大学三田キャンパス 北館ホール
         https://www.keio.ac.jp/ja/maps/mita.html → キャンパスマップ【1】北館の1階です

*受講料: 無料

*申 込: 不要(直接会場にお越しください)

*チラシのダウンロードはこちら

2018/07/26(木)

2017年度公開講座の開催

2017年度言語文化研究所公開講座を下記の通り開催いたしました。

テーマ:アジアの諸文化とジェンダー
人間の諸文化には性差に関わる独自の思考や慣行が見られます。それらの文化的な性差は人間をどのように規定してきたのか。人はそれにどのように対応してきたのか。アジアの諸事例から考えてみたいと思います。


■ 第1回 10月7日(土) 14時00分~16時00分 
講師:後藤 絵美氏(東京大学 日本・アジアに関する教育研究ネットワーク特任准教授/東洋文化研究所准教授)
演題:イスラームの啓典とジェンダー:男女のあり方と役割を中心に

ムスリムにとってクルアーンの言葉は一字一句に至るまで神に由来するもので、そこには神が定めた事柄が示されていると考えられている。ただし、ある章句をどう解釈し、そこにどのような「神の定め」を読み取るのかは、個人や集団によって異なることがある。 クルアーンの啓示解釈の中でも、とくに大きな揺れ幅がみられるのがジェンダーに関わる部分である。本講演では、「男女のあり方と役割」を示した章句を取り上げ、それがこれまで、どのように読まれてきたのかを見ていく。


■ 第2回 10月14日(土) 14時00分~16時00分
講師:坂元 ひろ子氏(一橋大学名誉教授)
演題:中国の身体文化とジェンダー:近代を中心に

中国文化にあって、男性の科挙と同様、階層・民族・ジェンダーと関わって長く続いた、女性の纏足という足の変形加工の風習は無視できない。加工は中国文化の基本とはいえ、一方で古くより父母から受けた身体髪膚を損なわないのが「孝」の基本とされ、儒者の纏足批判もあった。清代には漢族の風習としての禁令もとりさげられ、近代に批判が高まるまでは大流行した。時代の変化に応じながらも、身体性ゆえに時間を要した解消過程の困難さについて考えてみる。


■ 第3回 10月21日(土) 14時00分~16時00分
講師:伊藤 友美氏(神戸大学大学院国際文化学研究科准教授)
演題:現代上座仏教世界の比丘尼:ジェンダーとヒエラルキー

近年に至るまで、スリランカ・タイをはじめとする上座仏教圏において、黄衣をまとった仏教の僧侶は、比丘と呼ばれる男性の僧侶に限られており、比丘尼と呼ばれる女性の僧侶としての出家は、現代には不可能であると考えられてきた。男性の比丘のみから構成される現代の上座仏教圏のサンガ(僧団)は、いずれの国においても、公式には女性の比丘尼出家を実施・容認していないものの、2000年代以降、スリランカとタイでは、比丘尼として生きる女性が増加・定着しつつある。本講義では、様々な社会的立場にある人々の比丘尼に対する見解から、現代上座部仏教におけるジェンダーとヒエラルキーの問題について検討する。


*会 場:慶應義塾大学三田キャンパス 北館ホール
       https://www.keio.ac.jp/ja/maps/mita.html → キャンパスマップ【1】北館の1階です
*受講料:無料

2017/10/24(火)

2016年度公開講座の開催

2016年度言語文化研究所公開講座を下記の通り開催いたしました。

テーマ:東南アジアの多民族・多言語社会-ベトナム・シンガポール・インドネシア-

東南アジア諸国に共通して見られる多民族・多言語状況は、それぞれの国において多様性に富んだ文化を育むと同時に、国民統合という課題への取り組みを余儀なくさせる要因にもなっています。本講座では、ベトナム、シンガポール、インドネシアの3か国について、民族と言語の状況、国家語と民族語との関係、言語政策・言語教育政策、今後の展望を中心的話題として、現地調査経験の豊富な専門家がわかりやすく解説します。


■ 第1回 10月8日(土) 14時00分~16時00分 
講師:伊藤 正子氏(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科准教授)
演題:多民族国家ベトナムと少数民族語政策

ベトナムには、国家が公認した54の民族(人口の約86%を占めるキン(ベト)人と53の少数民族)がいる。身分証明書には民族名が書かれており、何民族かはベトナム人のアイデンティティの重要な一部である。ベトナムは国民を民族に分類してこそ、それぞれに的確な政策が実施できると考えてきた。言語政策においても、国家語のベトナム語と並んで、少数民族は自身の言語と文字を使う権利があると規定し、1960年代には、少数民族語の正書法制定に熱心に取り組んだ。本講演では、中越国境地域に居住するタイー人・ヌン人と、モン人をとりあげ、キン人との関係性により、少数民族語教育の目的が、ドイモイ開始後民族によって異なってきた様相を明らかにする。


■ 第2回 10月15日(土) 14時00分~16時00分
講師:奥村 みさ氏(中京大学国際英語学部教授)
演題:シンガポールにおける二言語教育政策による文化変容と国民文化のゆくえ

「龍に翼、獅子に鰭、虎に角」という言葉がある。強いものがさらに強くなる、という諺である。シンガポールの象徴マーライオンはまさしく獅子に鰭。いまや一人あたりのGDPは日本を抜いたシンガポール。二言語教育政策は果たして、シンガポールという獅子を国家としてより力強く発展させ、「陸と海の王者」たらしめる強力な鰭となりうるのか。
本講演では、独立直後から実施されてきた二言語教育政策の50年間の成果と問題点を具体的な例を挙げながら論じる。特に21世紀に入ってから政府は「良い英語を話そう運動(Speak Good English Movement)」を展開し、SNSの急速な普及などとの相乗効果で若者の間では英語使用が拡大しており、国民文化にも大きな変化が生じてきた。最後に、多民族・多言語国家シンガポールの今後の言語状況と文化・社会のゆくえについても言及したい。本講演が将来の日本の英語教育を考える一つの契機ともなれば幸いである。


■ 第3回 10月22日(土) 14時00分~16時00分
講師:内海 敦子氏(明星大学人文学部准教授)
演題:インドネシアにおける国家語と民族語-700の言語が息づく島々の多言語状況-

インドネシアは5つの大きな島と無数の島々(1万3,000以上)からなり、2億3千万人を超える人々が暮らしている。民族や言語の数も大変多く、720程度と報告されている(SIL International)。本講演では、インドネシアにおける「民族の言語」と「国家の言葉であるインドネシア語」の関係を、ジャワやスラウェシなどいくつかの地域を例に挙げて解説する。
民族語はその使用実態によっていくつかの種類に分けられる。ある特定の大民族と結びつき存在感を持つもの、地域共通語としていくつかの民族によって用いられるもの、話者の少なさと他民族との接触ゆえに使われなくなっていくもの、などである。ダイナミックな変化を続ける民族語の姿を、国家語たるインドネシア語との比較から浮かびあがらせたい。


*会 場:慶應義塾大学三田キャンパス 東館ホール
       https://www.keio.ac.jp/ja/maps/mita.html → キャンパスマップ【3】東館の8階です
*受講料:無料
*申 込:不要(直接会場にお越しください)

2016/07/13(水)

2015年度公開講座の開催

2015年度言語文化研究所公開講座を下記の通り開催いたしました。

テーマ:古代インドの言語と文化 ― 発展と伝播

印度古典文化は、ヒンドゥー教・佛教・ジャイナ教などの諸宗教の中で、サンスクリット語・プラークリット語・ドラヴィダ語などの諸言語を通して形成され、さまざまな展開を遂げ、さらに海外に伝播しました。この絢爛たる印度古典文化のいくつかの局面を選び出し、それぞれの専門家が、内外の研究成果をも踏まえながら平易に解説します。サンスクリット文芸の分野では、大叙事詩「ラーマーヤナ」を採りあげ、南印度のドラヴィダ文学については、最古のサンガム文学の特色と発展について考察します。印度語古典はジャワ島にも伝わり、古ジャワ語による一種華麗なる独特の文芸が開花しました。本邦ではまだあまり知られていない、この古ジャワ語文学についても講義します。印度や印度文化に関心を懐いている方々のご聴講をお待ちしております。


■ 第1回 10月3日(土)14時00分~16時00分 

講師:土田 龍太郎氏(東京大学名誉教授・慶應義塾大学言語文化研究所講師)
演題:大叙事詩「ラーマーヤナ」-シーターの謎

ヴァールミーキ仙人の作と言われる名高いサンスクリット語大叙事詩「ラーマーヤナ」は、聖王ラーマの生涯を謳う巨篇であり、主人公ラーマが猿軍を率いてランカー国に遠征し、羅刹王ラーヴァナを退治し、愛妃シーターを救い出すまでのいきさつがことに詳しく語られている。女主人公のシーターの出生と他界にはなにかしら謎めいたところがあり、ラーマとシーターの夫婦生活もいくつかの問題を孕んでいる。叙事詩テキストが発展してゆく過程で、主人公ラーマと妃シーターの性格も微妙な変容を蒙ったと思われるが、本講演では、女主人公シーターに焦点を当てながら、ヴァールミーキ叙事詩の諸問題を考察することにしたい。


■ 第2回 10月10日(土)14時00分~16時00分

講師:安藤 充氏(愛知学院大学文学部教授)
演題:古ジャワ文学―サンスクリット文学の受容と展開

古ジャワ語はジャワやバリで伝承されてきたオーストロネシア語族の言語だが、サンスクリット語からの借用語が非常に多く、サンスクリット文学からの翻訳、翻案作品がたくさん残されている。
 本講演では、世にあまり知られていない古ジャワの言語と文学を概観したうえで、古ジャワの作家がサンスクリット古典の正確な知識を作品に反映させる一方で、誤解も含め現地的な解釈、独特の変更や創作を施している点に焦点をあてる。「バガバッドギーター」などを取り上げ、サンスクリット版と古ジャワ版の双方を参照しながら、古ジャワ世界におけるサンスクリット文学の受容のあり方について考察してみたい。

■ 第3回 10月17日(土)14時00分~16時00分
講師:高橋 孝信氏(東京大学文学部)
演題:サンガム文学―南インド古代の世界

サンスクリット語ととともにインドの二大古典語とされるタミル語には、サンガム文学と呼ばれる古代文学(紀元後1~2世紀ごろ)がある。サンスクリット文学とは異なり、サンガム文学は非常に写実的であるから、インドの古代社会の様子を知りたいわれわれにはありがたい。他方、年代・地域・文化の隔たりによって分からないことも少なくない。そこで、本講演では、タミル古代文学の紹介のかたわら、語学だけでは直ちに理解できない事例をいくつか取り上げて、文学研究に必要なものがなんであるのかを考察する。


*会 場:慶應義塾大学三田キャンパス 北館ホール http://www.keio.ac.jp/access.html
*受講料:無料
*申 込:不要(直接会場にお越しください)

2015/08/20(木)

2014年度公開講座の開催

 下記の通り2014年度言語文化研究所公開講座を開催いたしました。

  
 2014年度 公開講座

 ◆テーマ:「古代オリエントの言語と文化」

 ◆コーディネーター:杉本 智俊氏(文学部教授)
 

 <第1回> 
 日 時:2014年10月4日(土) 14:00~16:00
 講 師:小板橋 又久氏(慶應義塾大学文学部講師) 
 演 題:「古代オリエントの楽器-ウガリト語とアッカド語の資料を主に用いて-」
 

 <第2回> 
 日 時:2014年10月11日(土) 14:00~16:00
 講 師:田澤 恵子氏(慶應義塾大学言語文化研究所講師、古代オリエント博物館研究員)
 演 題:「古代エジプト語-そこに息づく文化と人々-」

 <第3回> 
 日 時:2014年10月18日(土) 14:00~16:00
 講 師:髙井 啓介氏(慶應義塾大学言語文化研究所講師)
 演 題:「夢解釈の技法-楔形文字文学とヘブル語聖書の比較の視点から―」


 会 場:慶應義塾大学三田キャンパス 北館ホール
 
 受講料:無料
 
 申 込:不要(直接会場にお越しください)
 

2014/10/21(火)

2013年度公開講座の開催

 下記のとおり2013年度言語文化研究所公開講座を開催いたしました。

 

2013 公開講座    

テーマ:井筒俊彦と「西洋」の思想

会場:慶應義塾大学 三田キャンパス 東館ホール(8階)

 

プログラム:20131012日(土)14:0015:30

         野元 晋  趣旨説明と全体へのイントロダクション

         市川 裕氏(東京大学大学院 教授)「井筒俊彦とユダヤ思想-哲学者マイモニデスをめぐって」

      

        2013年1019日(土)14:0016:30

         納富 信留氏(慶應義塾大学文学部 教授)

                  「ギリシア神秘哲学の可能性井筒俊彦『神秘哲学』を読み直す」

         山内 志朗氏(慶應義塾大学文学部 教授)「井筒俊彦と中世スコラ哲学」

          コーディネーター 野元晋(言語文化研究所 教授)

受講料:無料  

申込:不要(直接会場にお越しください)

2013/10/03(木)

2012年度公開講座の開催

2012年度言語文化研究所公開講座を下記の通り開催いたしました。
 
 
慶應義塾大学言語文化研究所は今年創立50周年を迎えました。前身となる語学研究所の創立から数えると70周年になります。
創立50周年を記念しまして、下記のような公開講座、講演会、シンポジウムを開催することになりました。
皆様奮ってご参加ください。

2012/10/06(土)

2011年度公開講座の開催

2011年度言語文化研究所公開講座を下記の通り開催いたしました。
テーマ ウェルギリウスとホラーティウス―黄金時代をつくった二人の詩人
 紀元前一世紀後半は、一般にラテン文学の黄金時代と称されます。その代表的な存在が、ウェルギリウス(前70年~前19年)とホラーティウス(前65年~前8年)の両詩人です。この講座では、第一人者の研究者の方々をお迎えして、両詩人の作品について様々な角度からお話いただきます。

2011/10/08(土)

2010年度公開講座の開催

2010年度言語文化研究所公開講座を下記の通り開催いたしました。

テーマ 天・神々・祖先:中国人の思想と信仰

中国思想・文化研究の近年の新たな展開を取り上げます。祭祀・信仰に焦点を当てて、儒教の祭祀、道教の神々の変容、儒教と西洋思想、儒教と風水という独自の切り口で気鋭の研究者にお話しいただきます。広く中国の思想・文化に関心を持つ方々の参加をお待しております。

2010/10/16(土)

2009年度公開講座の開催

下記の通り、2009年度言語文化研究所公開講座を開催いたしました。

テーマ イスラーム文明と西洋世界

2009/10/17(土)

2008年度公開講座の開催

下記の通り、2008年度言語文化研究所公開講座を開催いたしました。

テーマ 女神の変容:古代オリエント世界から地中海世界へ

2008/10/04(土)

2007年度公開講座の開催

下記の通り、2007年度言語文化研究所公開講座を開催いたしました。

テーマ 現代認知科学の諸相

1950年代の「認知革命」以来、着実な歩みを続ける認知科学を取り上げます。研究の第一線で興味深い成果を発表し続ける3人の研究者を迎え、発達、言語、神経科学などをめぐる諸問題に鋭く切り込みます。認知科学を志すかたがた、認知科学の研究者、そして、広く認知科学に関心を持つかたがたの参加をお待ちいたします。

2007/10/13(土)

2006年度公開講座の開催

2006年度公開講座を下記の通り開催いたしました。

全体テーマ 『日系人の生活とアイデンティティ』

2006/10/28(土)

2005年度公開講座の開催

2005年度公開講座を下記の通り開催いたしました。

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全体テーマ Chomsky: Aspects の現代的意義

ChomskyのAspects (1965)が刊行されて40年が経過した言語学の現代的状況のなかで、その第1章に述べられている「方法論上の予備的仮定」がどこまで正当化され、あるいは評価されるかを、3つの観点から検証する。

2005/10/15(土)

2004年度公開講座の開催

2004年度公開講座を下記の通り開催いたしました。

2004_poster2.jpg
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テーマ:世界史の中のイスラーム世界

2004/11/06(土)

2003年度公開講座

2003年度言語文化研究所公開講座を下記の通り開催いたしました。

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テーマ:東アジアの人びとの暮らしとその変容

2003/11/01(土)

2002年度公開講座

2002年度、言語文化研究所では創立40周年を記念し、下記のとおり公開講座を開催いたしました。

2002/04/22(月)